2016年10月21日

歩む 著:赤鈴

 俺は暗闇の中をずっと歩いている。

歩いても、歩いても光は見えてこない。

それでもいつか光が見えてくることを信じて歩き続けてきた。

何度転んだか知れない。何度つまづいたか知れない。

時々歩くのが辛くて、歩くことそのものをやめたくなることがある。

一向に光の見えてこないことに対して絶望し、希望を見い出すことができず自分が何の為に歩き続けているのか分からなくなる時がある。

それでも歩くことをやめる勇気すら持てず、俺はずっと何かに歩かされ続けてきた。





 "出口のないトンネルはない"と誰かが言っていた。

たしかにそうかもしれない。でも、いつになったらその出口は見えてくるのだろうか。

暗闇で自分が進んでいるのかどうかも分からなかった。自分がどこに向かっているのか、どこへ行きたいのかさえも。

この先10年、20年も歩き続ける自信を俺は持てずにいた。

周りからは根拠のない綺麗事や、分かりきったような正論ばかりを聞かされ続けた。もうそんなことは耳にタコだ。





 どんなに暗い夜にも必ず朝は訪れる。たとえ望んでいなくても。

そんな無限ループのようなサイクルの中、俺はただただ流され続けてきた。

そこには喜びも楽しさもなかった。あったのは自分に対する嫌悪感と、劣等感、そして不安と絶望だけだった。



それでも俺は歩き続けるしかなかった。

それしか自分の中に選択肢がなかったからだ。

いや、他に選択肢はあるのかもしれない。でも、俺はその選択肢しか選ぶことができなかった。

俺という人間はどこまでいってもつくづく小心者なのだ。





 今の自分があるのは過去の自分の積み重ね。

今まで歩み続けてきた結果が今の自分の姿なのだ。

そう考えると全ては自業自得。誰が悪いわけでもない。自分が悪いのだ。

かといって、今から過去を悔やんだとしても過去は変えることはできない。

でも、未来は変えることができる。それも全ては今の自分の積み重ね。

今は過去となり、そして未来は今となる。



時間は有限だ。

少しずつこぼれ落ちていく砂時計のように確実に時間はなくなっていく。

その限られた時間を使って自分がどう歩むか。それによって未来は決まる。





 歩くことに疲れたら立ち止まってみるのもいいかもしれない。

時間の使い方なんて人それぞれだ。

立ち止まって、少し休憩する時間だって時には必要なこともある。

長時間歩き続けるのはしんどいものだ。



歩く方向を見定め、一歩一歩着実に歩んでいきたい。

そして疲れたら休み、また歩き出す。

ゆっくり、ゆっくり。しかし着実に。





 辛い時は辛いと言おう。泣きたい時は我慢せずに泣こう。

そしていつの日か光が見えてきたその時は目一杯喜び、思いっきり笑ってやろう。

光が見えるその時までもう少し歩いてみようと思う。

今は少しだけだけどそう思うことができる。

希望はまだここにある。
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2016年07月13日

恋をして 著:赤鈴

 俺には好きな人がいる。もう2年も片想いだ。
これまで俺はこと恋愛に関しては淡泊だった。告白して、フラれたら、その時点で諦めていた。
でも、今回は今までの恋愛とは少し違っていた。
告白をして、フラれても諦めることなんてできなかった。それは恐らく、俺が本気だからだろう。
俺は今年で25歳になったが、彼女なんてできたことがなかった。仕事でも、プライベートでも上手くいかず、ロクな人生ではなかった。
そんなロクでもない人生が彼女と出会ったことで少し、変わった。
1つだけ、本当に1つだけだけど、人生に楽しみができた。
 彼女の名前は立花 凜子。出会いは友人主催の合コンだった。最初は正直、見た目で惹かれた。
彼女はスタイルもよく、とても綺麗な人だった。当然、彼女は他の男の目を集めた。
しかし、話してみると、綺麗な外見とは裏腹に、とても肝の据わった、気の強い女性だということが分かり、他の男はいつの間にか他の女性にターゲットを変えていた。男はいつの時代も"女の子らしい"可愛い女性が好きなんだろう。
でも、俺は違っていた。
彼女と話せば話すほど、彼女のその魅力に惹かれていった。それは正直外見もそうだが、それ以上に彼女自身の中身にも惹かれていた。
俺はこれまで、ここまで気持ちいいほど思ったことをズバズバ言ってくれる女性と出会ったことがなかった。それが新鮮だったのかもしれない。
彼女とは別れ際に連絡先も交換した。それ以降、何度か連絡を取り合い、月に1回程度だが、会うようになった。しかし、それはあくまでも"友人"としてだった。
 最初に彼女に告白したのは彼女と出会って1年近く経った頃だった。
俺はいつものように彼女と会う約束をした。事前に少しオシャレな感じの店を予約し、2人で食事をした。その時に、俺は思い切って彼女に告白をした。
「凜子ちゃんと一緒にいると楽しいし、本当に一緒にいて楽なんよ。これからもずっと一緒にいたいって思う。時々怒ってもいいから、凜子ちゃんの笑顔をずっと隣で見ていたい。一緒に幸せになりたいって思うし、してあげたい。だから、その・・・付き合ってください!」
今まで生きてきて、これ以上ないくらい勇気を振り絞った。手の震えが止まらず、手汗がヤバイことになっているのが自分でも分かった。彼女は俺が言い終わるまで、じっと見つめてくれた。少し考え込んだ後、彼女は口を開いた。
「雄太がいい人なのはなんとなく感じてるし、実際そうなんだと思う。でも、正直雄太に対して恋愛感情はないんだ。ごめんなさい。気持ちだけ受け取っとく」
今まで生きてきて、これ以上ないくらい絶望感を、この時俺は感じていた。でも、それでも諦めることなんてできなかった。本気で彼女のことが好きだったから。
フラれたからといって、それで"はい、次!"なんて都合良く心の切り替えなんてできるはずもなかった。俺の中で彼女の存在はそれほどまでに大きく膨れ上がっていた―。
 それからも彼女はこれまで通り会ってくれた。"友人"として。そして、現在に至る、というわけだ。
彼女への想いはなくなるどころか、むしろ以前にも増して大きくなっていた。本当は毎日でも会いたいくらいだったが、いかんせん安月給な俺は月に1〜2回が限度だった。
一番辛いのは別れる時だ。また1ヶ月会えないのか、と思うと、胸が苦しくなった。夢から現実へと無理やり引き戻されるような、そんな感覚。
―もっと俺に金があれば
何度そう思ったか知れない。世の中、やはり最後は金なのだ。世界は世知辛く、欲望で溢れている。
俺は仕事にやりがいなんて感じたことはない。生活費の為もあるが、月に1回か、2回ある彼女と会う日に使う金の為に働いてる方が大きかった。金の為以外に働く意味なんて、これっぽっちも感じていなかった。
 そんな日々の中で、時々自信がなくなることがある。
―俺と彼女との関係は、このままでは一生"友人"のままなんじゃないか
と。そう思うと不安で夜も眠れず、苦しさで死にそうになり、自分の将来の希望が見えなくなっていた。
恋愛がこんなにも苦しくて、辛いものだなんて、俺は知らなかった。こんなにも辛いなら、いっそのこと恋なんてしなきゃよかった。
そんな風に思ってしまう日もあった。俺は恋に殺されかけていた。
 ある日、俺はいつものように彼女と会う約束をしていた。場所はどこにでもあるような居酒屋。
その日の夜、いつもの待ち合わせ場所で彼女を待っていると、人混みに紛れて彼女が現れた。
「オッス」
「おう」
軽く挨拶を交わし、2人で居酒屋へと向かった。夏ということもあり、夜でも蒸し暑く、汗ばんでしまう。
10分ほど歩き、目的地である居酒屋へと到着した。土曜日の夜、ということもあり、店内は客でごった返している。
「2人なんですけど、大丈夫ですか?」
「カウンター席でもよろしいでしょうか?」
「俺はいいけど、凜子ちゃんは大丈夫?」
「私も別にカウンターでいいよ」
「じゃあ、カウンターで」
「ありがとうございます!では、こちらへどうぞ」
店員にカウンター席まで案内され、2人で腰をかける。すぐに冷たい水が出てきた。俺はそれをすぐにガブ飲みした。身体に沁みわたるようだ。
「暑いねぇ」
「うん、マジ暑い」
「あっ、そうだ。酒呑む前に渡す物があったんだ」
「なになに?なんかくれんの?」
「はい、これ」
俺は鞄から藍色の小箱を取り出し、彼女に開けて見せた。
「結婚しよ。やっぱ俺、諦めきれねぇんだわ、凜子ちゃんのこと」
「ここでそれ言う?」
「いいじゃん。庶民的で」
「もう、馬鹿なんじゃない。マジキモい。でも、もったいないから受け取ってあげる」
「なんてね、やっぱダメだよね・・・って、えっ?」
「えっ?」
「結婚してくれんの!?」
「仕方ないからしてあげる。それに、これ以上告白されるのもウザいしね」
「マジか!!ありがとう!よっしゃあぁぁー!!」
「声でかいって!他の人の迷惑でしょ!本当に馬鹿なんだから」
そう言いながらも、彼女は少し嬉しそうに笑っていた。この日、俺は彼女と朝まで呑んだ。
 あれから10年―。
今では子供にも恵まれ、彼女と幸せな家庭を築いている。過去の自分からは想像もできなかった未来が今、現実としてここにある。
もし今、タイムマシーンが目の前にあったら、過去に戻って自分に言いたい―
「お前には輝かしい未来が待っているんだ。だから、頑張って、踏ん張って生きろ!」
と。人間、どんなに辛く、暗い人生でも、少し、ほんの少し生きてみれば、思いのほか早い段階で明るい人生が待っていたりするものだ。俺は彼女と出会って、それを知ることができた。
彼女は今でも相変わらず気が強く、怒ると怖い。でも、時々見せてくれる彼女の笑顔が今でも俺に生きる活力を与えてくれている。俺は恋に生かされている。
俺は今でも彼女に恋をしている。そして、これからも―。
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posted by UGPシナリオ班 at 21:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月12日

オリジナル絵本『とべない鳥』 著:赤鈴 イラスト:まつり

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ある森に2羽の鳥が住んでいました。

この2羽の鳥は、なぜか空を飛ぶことができませんでした。





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2羽のうち1羽の鳥はいつか飛べることを信じて、毎日飛ぶ練習をしていました。

もう1羽の鳥は、そんな彼の姿を見て笑いました。

「そんなことをしても無駄だよ。俺達が飛べるようになる日なんて一生おとずれないのさ」

それでも、頑張り屋な彼はくる日も、くる日も飛ぶ練習をしました。





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練習をしては失敗し、その度にもう1羽の鳥には笑われていました。

身体も傷つき、もうボロボロです。

それでも彼はあきらめませんでした。





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時には辛くて、あきらめかけてしまう日もありました。

泣いてしまう日もありました。





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そんな時は空を見上げて、自由きままに空を飛び回る自分の姿を想像しました。

「ぼくは鳥だ。絶対に飛べる、飛べるんだ!」

彼は自分に言い聞かせ続けました。





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ある晴れた日のこと。

彼はいつものように飛ぶ練習をしていました。もう1羽のなまけものの鳥は、そんな彼の姿をいつものようにながめていました。





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なまけものの鳥はだんだんと眠くなってきて、いつの間にか眠ってしまいました。





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ふと目が覚めると、もう1羽の頑張り屋の彼の姿がありません。周りを見渡しても、彼はどこにもいませんでした。

「おーい!どこにいるんだよー!」

「ここだよー!」

声は上の方からしました。





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なまけものの鳥が声のした上の方を見上げてみると、そこには彼の姿がありました。

「ぼく、飛べたんだ!飛べるようになったんだよ、ぼく!」

彼はすごく気持ちよさそうに飛んでいました。

そんな彼の姿を、なまけものの鳥はうらやましく思い、ながめることしかできませんでした。





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彼はいつまでもうれしそうに笑いながら、飛んでいました。
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posted by UGPシナリオ班 at 19:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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